不動産投資を行っていると、『修繕積立金』という費用を負担する必要があります。「最近所有する投資用マンションの修繕積立金が値上がりしたが、なぜ上がったのかがわからない。値上げはよくあることなのだろうか。」と感じている人もいるのではないでしょうか。
本記事では、修繕積立金とはどのようなお金で、その目安・相場はいくらかなど、不動産投資をするなら知っておきたい修繕積立金に関する重要なポイントについて解説します。特に中古マンションの資産価値は、貯まっている修繕積立金の金額、滞納や借入の有無などに左右されることも多いため、本記事で紹介するポイントを購入前によく確認するようにしてください。
不動産投資における修繕積立金とは?
修繕積立金が徴収されるのは主に区分所有のマンションです。区分所有のマンションにおける修繕積立金の役割・使い道について解説します。
修繕積立金の目的と使い道
マンションの良好な居住環境を確保し、資産価値の維持・向上を図るためには、計画的かつ適切な修繕(大規模修繕工事)の実施が必要不可欠です。大規模修繕工事とは、外壁や給水管、排水管、水道管、ベランダ、バルコニーの工事や屋上の防水工事のことで、マンションでは一般的に10~20年ごとに行われています。大規模修繕を行う周期は回数を重ねるほど修繕周期が短くなる傾向にあり、1回目が平均15.6年、2回目が平均14.0年、3回目が平均12.9年です。大規模修繕工事の度に多額の一時金を徴収するのは区分所有者に大きな負担となるため、毎月『修繕積立金』という形で少しずつ徴収され、将来必要となる修繕のための積み立てが行われています。
修繕積立金だけでは大規模修繕工事の費用をまかなえない場合は、管理組合で借入をしたり、別途一時金として修繕費を徴収されたりすることがあります。
修繕積立金の負担者と支払先
修繕積立金はマンションの区分所有者が負担するお金で、管理組合に支払います。
修繕積立金の徴収方法
修繕積立金の徴収方法には、『均等積立方式』と『段階増額積立方式』の2種類があります。
現在の修繕積立金の積立方式は、全国の規模を問わず調査を行った令和5年度マンション総合調査(国土交通省)で見ると、均等積立方式を採用しているマンションが40.5%、段階増額積立方式が47.1%です。ただし、2015年以降に完成したマンションに絞ると81.2%が段階増額積立方式と、築年数が浅いマンションほど段階増額積立方式を採用している割合が高いことがわかります。
均等積立方式
均等積立方式とは、長期修繕計画を基に将来かかる修繕積立金の総額を計算し、完成当初から一定額の修繕積立金を徴収する方式です。国土交通省が推奨する修繕積立金の徴収方式で、資金計画が立てやすく、長くマンションを保有する場合や築年数が経過したマンションを購入する場合は、老後など将来の負担を軽減できるというメリットがあります。徴収額が一定のため未払いや滞納のリスクを軽減できるのもメリットです。また、均等積立方式を採用しているマンションは、修繕積立金の残高に余裕がある割合が高く、購入後に修繕積立金が大幅に増額される可能性が少ないため、売却しやすくマンションの資産価値の向上につながるといわれています。一方のデメリットとしては、購入直後の負担の重いことなどが挙げられます。
段階増額積立方式
段階増額積立方式とは、完成当初は修繕積立金の金額を低めに設定し、一定期間経過後から段階的に増額していく方式で、築浅のマンションの多くが採用している方式です。段階増額積立方式のメリットには、完成当初の負担の軽さや物価上昇など修繕時の事情を反映しやすいことなどがあります。築年数の浅い時期は負担が軽いため、築浅で購入し、10~20年程度で売却を想定しているような場合は、均等積立方式のマンションよりも負担する修繕積立金の総額が少なくすむ可能性が高いでしょう。一方で、修繕積立金の金額を変更するには、総会で金額変更の決議と区分所有者の同意を得る必要があり、合意が得られなければ、円滑な積立金徴収に支障が出るというデメリットもあります。区分所有者にとっては、段階的に修繕積立金の金額が上がるため、資金計画が立てにくく、急に負担が増えた際の滞納や未払いが発生する可能性が懸念されています。また、少なめの金額を積み立てるため、修繕積立金の余剰が生まれにくい傾向にあります。
投資用マンションの修繕積立金の相場は?
上記の通り、築浅のマンションでは上記段階増額方式を採用している割合が高く、築年数の経過ともなって値上がりするケースが一般的です。区分所有者が負担する修繕積立金の金額は、所有する部屋の広さ(専有面積)やマンションの共用設備やそのグレードなどに応じて高くなります。
近年修繕積立金の相場が上昇傾向ある理由には、昨今の人件費や建築費の高騰と、2021年に改訂された『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』があると考えられます。新しいガイドラインでは、修繕積立金の基準が引き上げられました。その背景には、修繕積立金の当初月額が著しく低く設定さている事例やそのために必要な修繕積立金が十分に積み立てられず、修繕工事費が不足するといった事例が生じていることなどが挙げられています。
修繕積立金と管理費の違いとは?
修繕積立金と混同されることの多い費用に『管理費』があります。
管理費はマンションの日々の維持・管理のために使うお金のことです。具体的には、共用部の清掃費用や光熱費、害虫・害獣駆除費用、管理人などの人件費などに充てられます。国土交通省が作成するマンション標準管理規約によれば、管理費として徴収したお金を大規模修繕の際に使用することは認められておらず、その逆も同様で、修繕積立金をマンションの日々の維持・管理に使用することはできません。ただし、マンションの管理規約において管理費の余剰は修繕積立金へ振り替えることができるというような文面になっていれば、管理費会計から修繕積立金会計へ振り替えることもできます。
築年数にともなって修繕積立金が値上がりする理由とは?
築年数にともなって修繕積立金が値上がりするのにはどのような理由があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
段階増額積立方式による徴収
段階増額積立方式とは、もともと修繕積立金が上がることを前提とする徴収方法です。近年その段階増額積立方式を採用するマンションの割合が増えていることからも、築年数にともなって修繕積立金が値上がりする傾向は、今後も続くと考えられます。
新築時の金額が低めに設定されていること
2021年に改訂されたガイドラインにも記載があるとおり、初期の販売をしやすくするために、あえて初期の修繕積立金が安く設定されている事例も多く報告されています。
当初想定していなかった修繕の発生
大規模災害時の修繕やグレードアップ工事など、完成当初に予定してなかった大規模修繕が行われることもあります。想定外の修繕が発生し、修繕積立金が不足した場合には、一時金の徴収や借入が行われることがあります。借入を利用して突発的な修繕費をまかなった場合は、返済費用を確保するために修繕積立金の値上げが実施されるケースが一般的です。
物価の上昇
物価が上昇すると、大規模修繕工事にかかる費用も増えます。近年では、人手不足による人件費の高騰に加えて建築資材の価格も上昇しており、その結果修繕積立金の値上がりも起こりやすくなっています。
中古マンションを購入する場合に修繕積立金に関して事前に確認すべきポイントは?
中古マンションを購入する場合に、事前に修繕積立金に関してよく確認しておくべきポイントを解説します。
修繕積立金の残高・滞納の有無
現在貯まっている修繕積立金の金額と滞納の有無(滞納がある場合は金額)は必ず確認する必要がある項目です。これらの情報は『重要事項説明書』に明記され、必ず説明される内容ですが、不動産会社の担当者に依頼して事前に調べてもらうことも可能です。修繕積立金に関する詳細は、管理会社が発行する『重要事項調査報告書』で確認することができます。
実際に、約30%の管理組合が管理費または修繕積立金の滞納(3ヶ月以上)があると回答しています。修繕積立金がきちんと貯まっていなければ、適切な修繕が困難になる可能性や大規模修繕時に一時金の徴収がある可能性が高まるため、必ず購入前に確認するようにしてください。また、区分所有法において前所有者に滞納があるマンションを購入すると、買主は、たとえそのような滞納の事実を知らなかったとしても、その支払い義務を負担することとされています。購入する部屋の滞納があるかについては必ず確認するようにしましょう。
築年数が増えるほど滞納のあるマンションの割合が高くなる傾向にあるため、築年数が経過したマンションを購入する場合は特に注意が必要です。あまりに滞納額が多いような場合は、マンションの運営・管理がうまくいっていない可能性が疑われるため、候補から外すことを検討する必要性があるでしょう。
管理組合の借入の有無
修繕積立金が不足する場合に、管理組合が金融機関などから借入をして、大規模修繕工事費の不足を補うケースもあります。修繕積立金を値上げすることで借入金の返済を行うケースが多く、計画的な返済と修繕積立金の積み立てが行えていない場合は、さらなる借入や修繕積立金の値上げの可能性が考えられます。借入の有無だけでマンションの良し悪しを判断することできませんが、借入がある場合は、計画的な返済と次回の大規模修繕に備えた積み立てが順調にできているかどうかを確認しておく必要性があるでしょう。
過去の修繕履歴
修繕履歴の確認も大切です。適切な修繕が行えていなければ、住環境の悪化や資産価値が低下する原因になります。その結果、将来の売却の難易度も上がってしまうという懸念点もあります。修繕履歴についても、前述の『重要事項調査報告書』で確認できるため、事前に取り寄せて確認すると良いでしょう。
修繕積立金の金額
現在の修繕積立金の金額が適正か、過去に一時金の徴収や大幅な修繕積立金上昇はなかったかを確認すると良いでしょう。該当する履歴があった場合は、当初の見積もりが甘かった可能性、売りやすくするため、あえて初期の修繕積立金の金額が低く設定されていた可能性が考えられます。
長期修繕計画
貯まっている修繕積立金等で将来も計画通りに修繕ができそうかという確認も必須です。
令和5年度マンション総合調査の結果を見ても、実際貯まっている修繕積立金の金額が計画に比べて不足しているマンションが36.6%、20%超不足しているマンションがそのうちの11.7%と、問題を抱えているマンションが多いことがわかります。計画通りに修繕積立金が貯まっていないマンションも少なくないため、よく確認しておきたいポイントです。
修繕積立金に関する注意点
修繕積立金に関して、勘違いする人が多く、購入前に理解しておきたいポイントについて解説します。
空室でも負担する必要がある
修繕積立金を支払う義務があるのはマンションの区分所有者です。投資用マンションの場合、オーナーは入居者の有無に関わらず修繕積立金を支払う必要があります。
修繕積立金とは別で修繕費(一時金)を徴収されることもある
大規模修繕時の費用が足りないには、借入を利用するケースが多くありますが、一時金として足りない分の修繕費を徴収されるケースもあります。ファミリーマンションと比べると比較的ワンルームマンションにおいては一時金の徴収をされるケースは少ないですが、大規模修繕にむけて計画的に貯められている物件を選びましょう。
売却しても修繕積立金は返却されない
貯まっている修繕積立金の金額はマンションの資産のため、売却しても返金されることはありません。
引き渡しの前日までの修繕積立金を負担する必要がある
マンションを所有している期間中は修繕積立金を支払う必要があるため、引き渡し日の前日までの修繕積立金は売主負担です。
中古マンションを購入する際には修繕積立金の残高などを必ず確認しよう!
修繕積立金とは、将来の大規模修繕などを円滑に行うために区分所有者が管理組合に毎月支払うお金のことで、管理費とは別物です。不動産の価値を高く保つためには、計画的かつ適切な修繕が欠かせません。中古マンションを購入する場合には修繕積立金の金額、残高、滞納の有無、修繕履歴、長期修繕計画等を必ず確認するようにしてください。
ジーイークリエーションでは、修繕積立金を計画的に貯めている物件を選りすぐってご紹介しております。今回紹介した不動産投資だけでなく、iDeCo・NISAなどを組み合わせて、バランスよく資産形成することをおすすめしています。生命保険診断から年金対策、相続税対策など、幅広いサポートが可能です。どのような方法で老後資金や教育資金を準備すべきかまだよくわからない人という方は、セミナーを活用して知識を深めることから始めてみてはいかがでしょうか。
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