近年、働く高齢者の姿をよく目にするようになりました。2022年の高齢者雇用安定法の改正により、勤め先の定年が延びた人もいるのではないでしょうか。
本記事では、働く高齢者の割合や一般的な働き方、平均的な収入などについて解説します。定年後も働く場合の注意点や定年後も働く必要性をなくすためにすべきことについても解説するので、老後資金の準備を進めるための参考にしてください。
定年後の一般的な働き方と収入とは?
多くの人が定年後も働いている現代における、高齢者の平均的な収入事情、お仕事事情を見ていきましょう。
定年後も働く人の割合
総務省が2023年に公表している「労働力調査」によると、定年を迎える60~64歳の就業率は74%と実に3人に2人以上が定年後も働いていることになります。65~69歳では52%と過半数の人が働いています。65歳以上の高齢者の就業者数は914万人超で、特に65~69歳の就業率は2013年の38.7%から13.3%も延びているのが現状です。
働ける年齢の上限
2024年現在、高齢者雇用安定法(9条)により、会社員や公務員の場合、定年後も希望すれば65歳までは働ける環境があります。実際に、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は厚労省が公表している令和5年「高年齢者雇用状況等報告」によると99.9%と高い実施率となっています。会社員・公務員であれば、65歳まで働ける可能性が高いと考えて問題ないでしょう。
政府は2022年に高齢者雇用安定法を改正し、「70歳までの就業機会確保」を目指しています。現状は義務ではなく努力義務ですが、2023年6月1日時点で定年の引き上げや70歳までの継続雇用制度の導入などを何らかの対応をした企業は全体の6割に上ります。このことから、将来的には「70歳」が1つの目安になると考えられそうです。
ただし、働き続けるためには、社会的に働ける環境があるだけではなく、健康で働ける身体がなければいけません。2019年の厚生労働省の調査によると男性の健康寿命は72.68歳、女性は75.38歳です。できる限り長く働きたいと考える人は、この健康寿命を延ばすための行動も必要となるでしょう。
定年後も働く理由
朝日新聞Reライフ.netが2022年に読者会議メンバーを対象に行った調査の結果は下記のとおりです。
社会とのつながりを持ち続けたい…60.4% 自分や家族の今の生活資金のため…57.6% 趣味や娯楽を楽しむ資金のため…43.1% 自分や家族の将来の生活資金のため…43.1% 社会に貢献したい…27.6% 働くことが好きだから…24.7% 自分や家族の介護資金のため…13.1% 他にすることがないから…7.1% 子供の教育資金のため…3.5% その他…6.4% |
社会とのつながりや社会貢献などお金以外を理由に挙げる人も多くいますが、金銭的な理由も目立ちます。
雇用形態
総務省が公表している「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」によると、定年後の雇用形態は非正規が全体の約76%です。「パート・アルバイト」が270万人(52.2%)で最も多く、「正規の職員・従業員」が124万人(24.1%)、「契約社員」が49万人(9.5%)、「嘱託」が36万人(7.0%)と続きます。
60歳以上の平均年収
国税庁が公表している「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、60歳以上の人の平均年収は、60~64歳441万円、65~69歳342万円、70歳以上298万円とされています。60歳以上の平均年収は、再雇用をきっかけに雇用形態が変わることで下がる傾向にあります。月給制が時給制に変わる、ボーナスの支給や役職手当がなくなるなどは、給与が大きく減る要因となります。
継続雇用を選んだ場合の給与の減額率
定年後も同じ会社で働く場合、不当な減額は違法ですが、60歳時点の給与額から2~4割減額されるケースが多いようです。
定年後再就職をする場合の年収の相場
定年後に別の企業等で働く場合の年収の相場に関するデータはありませんが、年齢とともに求人倍率は下がる傾向にあるため、定年退職後に新しい仕事を見つけて働く難易度はとても高いと考えられます。先述のとおり、働く高齢者の過半数がパート・アルバイトのため、再就職する場合は時給ベースの収入(地域の最低賃金×働く時間)を想定しておくのが無難でしょう。
定年後も働く場合の注意点は?
定年後も働く場合の注意点について解説します。
収入に応じて年金や健康保険の保険料が差し引かれる
定年後も、現役時代と同様に、給与や年金収入から収入に応じた健康保険料や年金保険料が差し引かれるため、収入額面=手取りではありません。
例えば、年間240万円(月額20万円)の年金収入と年間60万円(月額5万円)の勤労収入がある75歳の単身者の手取り年収は270~280万円程度です。
定年前と比べると、差し引かれる金額は少なくなりますが、全額受け取れるわけではないため注意が必要です。
社会保険への加入には年齢制限がある
会社員であれば、何歳になっても厚生年金や会社の健康保険に加入し続けられるわけではありません。
まず、70歳に到達する誕生日の前日に厚生年金の加入資格を喪失します。そして、75歳以降は後期高齢者医療制度へ移行するため、会社員でも自分で国民健康保険などに加入必要が生まれます。子供の社会保険の扶養に入っている場合も、75歳になると社会保険の扶養から外れるため、自分で国民健康保険などに加入しなければいけません。なお、介護保険料については、65歳を超えると親自身で支払う必要が生まれます。
75歳以降の人が支払う国民健康保険料の目安は、年収に応じて高くなります。東京都に居住する75歳以上の夫婦世帯の後期高齢者保険料の目安(夫婦の収入は同額と仮定)は下記の表のとおりです。
世帯年収 | 年金収入 | 給与収入 | 後期高齢者保険料(年間) |
200万円 | 各100万円 | 0円 | 各1万4,100円 |
300万円 | 各100万円 | 各50万円 | 各1万4,100円 |
400万円 | 各150万円 | 各50万円 | 各1万4,100円 |
500万円 | 各200万円 | 各50万円 | 各7万9,100円 |
600万円 | 各250万円 | 各50万円 | 各14万1,000円 |
上記の表で世帯年収400万円以下の後期高齢者保険料が一律なことからもわかるとおり、世帯の総所得金額等の合計が一定以下の世帯を対象とした軽減措置があります。
軽減措置の対象となる総所得金額は下記のとおりです。
| 世帯の総所得金額等の合計 |
7割軽減 | 43万円+10万円×(給与所得者等の数-1)以下 |
5割軽減 | 43万円+(29万5,000円×[被保険者数])+10万円×(給与所得または公的年金等所得がある人の数-1)以下 |
2割軽減 | 43万円+(54万5,000円×[被保険者数])+10万円×(給与所得または公的年金等所得がある人の数-1※)以下 |
※給与所得または公的年金等所得がある人の数が1人の場合は1として計算する
ただし、本人の所得が少ない場合でも世帯主の所得が多い場合は減額の対象とならないため注意が必要です。
一定以上の収入があると受け取れる年金が減る
働きながら年金を受け取る場合、基本月額と総報酬月額の合計額が50万円を超えると、年金が減額されます。賞与も12分割して計算されるため、年収600万円程度が目安です。
例えば、年金収入が月10万円(老齢厚生年金の報酬比例部分)で、給与収入(総報酬月額相当額)が50万円の場合は、(10万円+50万円-50万円)÷2=5万円となり、年金が1ヶ月当たり5万円減額される計算となります。
お金のために定年後も働く必要性をなくすためにすべきことは?
定年後もお金のために働かなくても大丈夫な状態にするためには、何をすべきなのでしょうか。若いうちから取り組むことで高い効果が期待できる対策を紹介します。
老後の生活費や介護費にかかる金額をシミュレーションする
「老後2,000万円問題」「物価が上昇しているため2,000万円では足りない…」などといわれていますが、定年後の生活や介護などに必要な金額はどのような老後を送るかによって大きく変わってきます。
例えば、生命保険文化センター「生活保障に関する調査」令和4年度においては、夫婦二人でゆとりある老後生活を送るための生活費は平均37.9万円となっています。年金以外の収入を準備しておかなければ貯蓄を切り崩して生活をしていかなければなりません。一特に、現在の生活レベルが高い人や老後も民間の賃貸住宅で暮らそうと考えている人などは老後資金が2,000万円あっても全く足りない可能性が考えられるでしょう。
また、老後2,000万円問題の根拠となった計算には、介護費用など含まれていない費用があるという点にも注意が必要です。介護が必要になった場合や、有料老人ホーム等に入居する場合、古くなった自宅のリフォームを行う場合などには、数千万円単位の資金が必要になることも珍しくありません。
自分の場合はいくらかかるのか、具体的にどのような老後生活を送りたいのかイメージして、その生活を実現するために必要な金額を計算してみましょう。
介護費用を含めた老後資金の計算方法や老人ホームの入居にかかる費用に関しては別記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
https://www.ge-creation.co.jp/column/rougosikin/
https://www.ge-creation.co.jp/column/rouzinhomu/
https://www.ge-creation.co.jp/column/lifeivent/#i-5
老後に受け取れるお金について理解を深める
老後いくら足りないかを知るためには、老後いくら受け取れるのかを知る必要があります。
各種シミュレーションサイトなどを活用して、「公的年金はいくら受け取れるのか?」「老後の収入からいくら税金や保険料が控除されるのか?」「加入している個人年金保険等から受け取れる金額と期間は?」など具体的に調べてみましょう。
前述の老後に必要な生活費・介護費との差額を求めれば、今から準備すべき老後資金がいくらなのか、より具体的に見えてくるでしょう。
勤労収入以外の収入を確保する
年齢を重ねると、収入を得るために働くことが難しくなります。
働かずして、生活を成り立たせるためには、取り崩しができる多額の資産を準備する、もしくは労働を伴わない収入源を確保するといった対策が必要です。
勤労収入以外の収入には、公的年金、私的年金(個人年金保険など)、不動産の家賃収入、株式等からの配当収入などがあります。
例えば70歳で仕事を辞め、100歳まで生きる場合、貯蓄と勤労収入以外の収入で暮らす期間は30年です。もし月20万円貯蓄を取り崩すと想定した場合、30年分の生活費の不足分として7,200万円の貯蓄を準備しなければいけません。介護やリフォームなどがかかると老後資金を5,000万円準備していても全く足りないという事態に陥る可能性も十分に考えられます。
そのような老後破綻等のリスクを減らすためにも、貯蓄だけでなく、勤労収入以外の収入を確保することが重要です。例えば前述のケースで、月10万円の不労所得があれば、不足する生活費の総額は半分の3,600万円になります。20万円の不労所得があれば、介護費用やリフォーム代などの臨時費用を準備しておけば足る計算です。
月10~20万円程度の不労所得を確保するのにおすすめの方法は、都心部での1Rマンション投資です。都心部で不動産投資を行うべき理由は、長期的に高い賃貸需要を見込めるためです。1Rマンションからの家賃収入があれば、余裕のある老後生活を送ることができるでしょう。少ない自己資金で、安定した不労所得をつくるためには、若いうちから準備を始めることが大切です。
定年後の収入を確保し、豊かな老後を実現しよう
2024年現在、3人に2人の人が定年後も働き、60代後半でも過半数の人が働いています。60歳以降も働く人が増えた現代ですが、年齢とともに平均年収は下がり、定年後の収入は現役時代の半分程度になることが一般的です。また、年齢とともに健康上の理由により働いて収入を得ること自体が難しくなります。お金のために働き続ける必要性をなくすためには、勤労収入以外の収入の確保が鍵となるため、早いうちから準備を始めましょう。
ジーイークリエーションでは、今回紹介した不動産投資や生命保険、iDeCo・NISAなどを組み合わせてバランスよく資産形成することをおすすめしています。生命保険診断から年金対策、相続税対策など、幅広いサポートができますので、お困りごとがある方は、無料の個別相談をご利用ください。
https://www.ge-creation.co.jp/soudan_form/
具体的に相談したいことはまだないけれど、将来のための備えを始めたいとお考えの方には、経験者の生の声が聞けるセミナーがおすすめです。既に老後対策を始めている人の体験談を聞くことで、今自分が何をすべきかが具体的に見えてくることも多いはずです。
投資初心者の方にもわかりやすいようにお伝えしていますので、お気軽にご参加ください。