「大手企業に入社できたら一安心」と考えられていた時代もありましたが、近年では上場企業が大量の早期退職者を募集しているというニュースや業績の大幅な下方修正が行われたといったニュースを耳にする機会が増えました。転職が一般化したことも重なり、一つの企業だけで会社員人生を終える人の方が少数派といえる時代が到来しています。
本記事では、早期退職の弊害に加えて、大手企業の会社員が早期退職をした場合でも困らないようにしておくために必要な備えについて解説します。
大手企業勤めでも一生安泰とはいえない時代に
数年前から大手企業でも1000人以上の規模で早期退職者を募集するなど大幅な人員削減が行われるケースが多くなっています。
近年大手企業が大量の早期退職者を募集している背景にはコロナ禍の業績悪化があるケースが多いといわれているように、会社が早期退職者を募集しているということは、会社がベテランを失ってでも人件費を見直す必要性に迫られているという意味でもあります。つまり、たとえ会社に残るという選択をしたとしても安泰とはいえないでしょう。
昨今の事例に限らず、早期退職者の募集は、年功序列の賃金制度の残る大手企業では特に負担の大きい中高年の人件費削減を目的として行われるケースが一般的です。
もし、あなたが40代、50代のときに会社で早期退職者の募集があったら、あなたはどう考え、どのように行動しますか?
コロナ禍で世界的に多くの企業の業績が一変したように、今は業績好調な企業でも10年後、20年後のことはわかりません。自分の身に降りかかった時に、冷静な判断ができるよう、早期退職のメリット・デメリットをよく理解し、困らないための備えをしておきましょう。
大手企業を早期退職することで生じる弊害とは?
早期退職者の募集に応じるかどうかを判断するためには、そのメリット・デメリットをよく理解しておく必要があります。
早期退職には割増の退職金が得られるなどのメリットがあるため、もともと転職を希望していた人や会社の将来性に不安を感じていた人にとっては渡りに船かもしれません。一方で、多くのデメリットも想定されます。
大手企業の早期退職者に高い確率で生じる弊害を紹介します。
安定した収入がなくなる
早期退職の大きな問題は安定した収入源を失ってしまうということです。収入がない期間が長期化すれば、割増の退職金を受け取れたとしても、生涯年収が大幅に減る可能性も考えられます。
早期退職後に再就職を目指す場合には、失業給付を受けられますが、早期退職優遇制度を利用した場合一般的に自己都合退職扱いになります。そのため、失業給付を受けられるまでに7日間の待機期間と2ヶ月の給付制限期間があります。なお、2024年の雇用保険法の改正によって2025年4月より自己都合退職による給付制限期間が1ヶ月に短縮されます。
自己都合退職で退職した人が受け取れる失業給付金の金額は下記の計算式で計算でき、賃金が低い人ほど高い給付率となります。
離職以前6ヶ月の賃金の合計÷180×給付率(50~80%)
また、65歳未満で自己都合退職をした場合の基本手当の給付日数は以下の表の通りです。
被保険者であった機関期間 | 給付日数 |
10年未満 | 90日 |
10年以上20年未満 | 120日 |
20年超 | 150日 |
まず、公的介護保険制度や勤務先で活用できる制度など、将来自分や家族に介護が必要になった場合に活用できる制度について調べておきましょう。
介護が必要になった際に活用できる制度としては、下記の表のような制度があります。下記以外にも、自治体が主体となって支給している給付金などもあるため、自身や親が住んでいる自治体で活用できそうな制度がないか調べておきましょう。
社会的信用力が低下する
在職中はあまり気にしたことのない人も少なくないかもしれませんが、大手企業の正社員は社会的信用力が高いため、住宅ローンやクレジットカードなどの審査で有利に働きます。しかし、早期退職後に会社員時代と同じように借入や転居、クレジットカードの申し込みをしようと考えても、大手企業の正社員という社会的地位と社会的信用力がなくなっているため、審査に落ちてしまうケースが増えるでしょう。
改めて同等の信用力がほしいと考えても、大手企業は新卒一括採用を実施しているケースが多く、再び同程度の規模の企業に再就職するハードルは高いでしょう。さらに、運よく大手企業に再就職できた場合でも、勤続年数も短くなるため、転職前と同等の社会的信用力を再び得ることは簡単ではありません。
もし、マイホームの購入など信用力が必要なライフイベントを控えている場合は、退職前に済ませておくのが賢明でしょう。
キャリアが中断される
大手企業であれば定期昇給があり、40~50代ともなれば、日本の平均年収よりも高い収入を受け取っている人も少なくありません。早期退職により、そのキャリアが中断すると、転職できたとしても給与が減り、また1からキャリアを築いていく必要性に迫られます。
運よくキャリアを生かせる仕事に転職できたとしても、扱う商品やサービスが異なり、それまでのやり方が新しい会社で通用せず、なかなか結果が出せず、昇給に結びつかないといったジレンマに陥るケースも珍しくありません。
実際に、独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った「中高年齢者の転職・再就職調査」では、45歳以上の中高年男性は転職に際して月の賃金額の平均値が低下したという調査結果が出ています。
受給できる年金の金額が減少する
厚生年金の金額は一般的に給与と勤務年数に比例します。そのため、早期退職によって厚生年金に加入しない期間ができたり、収入が低くなったりすると、その分老後に受け取れる年金額も少なくなります。大手企業の場合、企業年金制度(DB)があるケースも多くありますが、受給要件に「60歳以上で退職した場合」などとあるケースが多く、40~50代で退職すると企業独自の年金を受け取れなくなる可能性が高まります。
再就職しない場合は年金受給開始まで無収入期間が生じ、60歳で公的年金を繰り上げ受給する場合は、年金額が24%減る点にも注意が必要です。
難易度の高い中高年での転職活動の必要性が生じる
若年層に比べて中高年での転職活動は難易度が高いといわれています。年齢が上がると転職が難しくなる理由は、人材の育成にはお金と時間がかかるため、できる限り長く会社に貢献してほしいと考える経営者が多く、中高年を対象とした求人数がそもそも少ないためです。また、前職の大手企業時代と同等の待遇を求めてしまうとさらに再就職の難易度は高くなります。そのため、他社でも即戦力となれるような技術や資格等を有する人でもなければ、40~50代で早期退職に応じた場合には、転職活動の長期化や収入減を想定しておく必要があるでしょう。
社会とのつながりが希薄になる
早期退職の弊害は金銭的なものだけではありません。早期退職をして再就職しない場合には、社会とのつながりが希薄になり、孤立するケースが少なくないといわれています。会社以外でも社会とつながれる場所を持っておくことも大切でしょう。
大手企業を早期退職しても困らない人の特徴
早期退職によって収入が途絶えたり、年金が減ったりしたとしても困らない人にはどのような共通点があるのでしょうか。大手企業を早期退職しても困らない人の特徴を解説します。
資産形成をしている人
貯蓄や投資などで一定以上の資産を持っていれば、早期退職後に新たな収入を得られるようになるまでの期間、その資産を切り崩して退職前の生活レベルを維持することが可能になります。
40~50代で金銭的な不安なく早期退職の募集に応じるためには、最低でも1年分の生活費に加えて、子どもの進学費用などの近い未来に必要な大きな費用をまかなえる程度の金額を目安に準備しておく必要があるでしょう。
複数の収入源がある人
主たる会社からの収入以外に、副業や資産からの収入がある場合、資産の切り崩しを最小限にすることができます。例えば、再就職までに1年かかったとしましょう。その場合、4~5ヶ月は前職給与の50~80%程度の失業給付を受けられますが、半年以上収入がない期間が生じます。もし月10万円でも会社を辞めても入ってくる収入があれば、120万円分の資産を取り崩す必要がなくなり、精神的な余裕にもつながるでしょう。
万が一の備えとなる資産形成3選
早期退職など収入が途絶えたり大幅に減ってしまったりした際の備えとなる資産形成にはどのようなものがあるのでしょうか。3つの具体例を紹介します。
NISA
金融機関に預けていてもほとんど利息が付かないため、株式や投資信託の運用にチャレンジしようと考える人も多いでしょう。
株式や投資信託の運用益には通常約20%の税金がかかりますが、NISAを活用することによって非課税で資産形成を行うことができます。2024年から始まった新NISAでは、つみたて投資枠で年間120万円まで、成長投資枠で年間240万円まで、生涯で最大1,800万円までの投資が非課税で行えるようになりました。
NISAで早期退職の備えをするメリットは、非課税で運用できることに加えて、運用資金をいつでも引き出せるという点が挙げられます。そのため、早期退職後に生活費などが不足した場合に、運用していた資金をすぐに現金化し、不足を補うこともできます。
iDeCo
iDeCoで早期退職の備えをするメリットは、NISA同様に非課税で運用できることに加えて、掛け金が全額所得控除になるということが挙げられます。会社員でも取り組める節税方法は限られているため、収入の高い会社員におすすめの選択肢です。
ただし、iDeCoは60歳までの引き出しができない制度のため、NISAのように早期退職直後の生活費として運用している資金を使うことはできないという点に注意が必要です。
iDeCoで備える場合は、早期退職によって減ってしまう老後資金や年金を補う目的で取り組むとよいでしょう。
不動産投資
不動産投資で早期退職の備えをするメリットは、勤労収入以外に安定した収入減を確保できるということです。
投資用不動産からの賃料収入があれば、早期退職後の収入減を補うことができるでしょう。また、賃料収入のようなフロー収入があればストック資産の切り崩しも少なくできます。
大手企業勤務という社会的信用力は不動産投資に欠かせない金融機関からの借入でも有利に働くため、自己資金を少なく不動産投資に取り組めます。生命保険や医療保険代わりとしても有効であるため、保険の見直しで無駄な保険料の支払いを防ぐことも考えられます。もし、不動産投資に興味があるのであれば、会社員時代から始めるのがよいでしょう。
人生の選択肢を増やすために資産形成を始めよう
現在業績好調な大手企業に勤めている人でも、一生安泰と考えるのは危険です。早期退職などで安定した収入が途絶えた場合に備えて資産形成を始めましょう。
ジーイークリエーションでは、投資用不動産やNISA、iDeCoを活用した資産形成を推奨し、その他、生命保険の見直し、年金対策、相続税対策など、幅広い相談を受け付けています。
◇下記URLより無料の個別相談をお申込みいただけます。お気軽にお申込みくださいませ。
https://www.ge-creation.co.jp/soudan_form/
将来のための資産形成を始めたいが、まだ何をすべきかよくわからない方はまずは資産形成初心者向けのセミナーに参加し、学ぶことから始めてみるのがおすすめです。